3-②. 統計的に影響がでやすい金属かどうか

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この記事のまとめ

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・金属パッチテストの統計結果で金属アレルギーの出やすさがわかる

・金属アレルギーになりやすい金属の第一位はニッケル

・銀やチタンは影響が少ない

・意外に金やプラチナが出やすい

・ステンレス製品、チタン製品の使用は注意が必要

 

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3.アクセサリーを選ぶ際の5つの大切なポイント

 

②統計的に影響がでやすい金属かどうか

 

 自身と金属との相性を調べる唯一の検査方法が金属アレルギーパッチテストです。たくさんの種類の金属が溶け出したシートを肌に直接貼りつけ、どうなったかを調べます。赤くなったり腫れたりした場合は、その金属に対して金属アレルギー症状がある、ということになります。

 

 

金属パッチテストの様子

第14回アレルギー疾患対策推進協議会  資料より

引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20162.html

 

 

この金属アレルギーパッチテストですが、その統計結果を皮膚科や歯科など、金属アレルギーとかかわりの深い機関が発表しています。代表的なものは厚生労働省が毎年発表している「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」です。

 

以下、平成 23 年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告より抜粋

引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002rwda.html

これは皮膚障害の報告ですが、装飾品(主に金属アレルギー)が多いことがわかります。

皮膚障害を年代別などで分けたデータですが、圧倒的に女性が多いです。これは日常的に装飾品をつけるためだと言われていますが、男性でも日常的に装飾品を身に着ける人は、同様に高い陽性率となると考えられます。

 

 

重要なのがこちらの各金属ごとの陽性数(金属アレルギーのある人)のデータです。宝飾素材に使用されることが多い金属を抜粋すると、

 

コバルト20人 

ニッケル28人

クロム5人

金11人

銀1人

銅4人

プラチナ7人

チタン0人

 

となります。

 

ニッケル、コバルトで症状が出やすく、銀やチタンが出にくいことがわかります。様々な合金に多用される銅も若干名計測されています。

 

宝飾素材に多く使用される金やプラチナに少なくない人数が計測されていることも注目したい点です。金やプラチナは一般的には金属アレルギー反応が出にくいと認識されています。ではこの数値にはどのような理由があるのでしょうか?

 

実は金やプラチナは一旦体内に入ると金属アレルギーの原因になりやすい傾向があるのですが、日常的に身に着けても、なかなか溶け出さないので体内に侵入しにくいのです。金属のイオン化で別途説明していますのでぜひご覧ください。

金属のイオン化についてはこちらで詳しく解説しています。

 

なかなか溶け出さないといっても、身に着けていても完全に体内へ侵入しないというわけではありませんので、金やプラチナで金属アレルギー症状が出る人もいます。これは金やプラチナに限った話ではなく、統計的に少ない銀やチタンでも金属アレルギー症状が出る人はいます。

 

ジュエリーに使用される金属は単体で使用されるわけではなく、合金化といって複数の金属を配合されて製作されます。ゴールド製品もシルバー製品も一般的には、銅など別の金属が使われています。

 

キャッチなどのパーツ、表面に施されるプレーティング、ピアスポストと本体に使用される溶接材など、それぞれ別の金属が使用されているケースもあります。簡単ではありませんが、製品に使用される金属全てに注意が必要です。

使用されている金属についてはこちらで詳しく解説しています

 

 

一般的に金属アレルギーなどに効果があるとされるサージカルステンレス(SUS316L)ですが、配合は以下の通りです。

ステンレス製品は安価で量産しやすい、丈夫で長持ちという利点があります。しかし、ニッケルが含まれているため、金属アレルギーの方へ向けた製品としては十分ではないと考えます。その懸念は、厚生労働省が行っているアレルギー疾患対策推進協議会でも指摘されています。

 

「本邦では、製品へのニッケル規制が法的に整備されていないので、ニッケル含有量の多い製品が今も様々な製品として流通しております。特に若い方の場合にはニッケル含有量の高いピアスや装飾品を日常的に使うことによって感作を受けているのではないかと考えられております。」

 

第14回アレルギー疾患対策推進協議会議事録より

引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20973.html

 

 

ステンレス製品とは明言されていませんが、ステンレスはニッケル含有量が多いのが特徴の一つです。

さらにサージカルステンレス(SUS316L)を日常的に体内使用することで金属アレルギーを起こす可能性について厚生労働省が注意喚起を行っています。

厚生労働省 平成23年7月20日「冠動脈ステントに係る使用上の注意の改訂等について」より

 

 

ステントとは血管を内側から拡張するための治療器具です。それにサージカルステンレス(SUS316L)素材が使用されることがあるのですが、金属アレルギーを引き起こす可能性について記述されています。

同様に、金属アレルギーについて効果があるとされるチタン製品ですが、使用する際には注意する点がいくつかあります。

チタン製品についてはこちらで解説しています。

 

チタンは近年の金属アレルギーパッチテスト統計では徐々に陽性報告が増えつつあります。これは歯科治療などにチタンが多用されたことが一つの原因と考えられており、チタン原因の金属アレルギーが起こりやすくなっている可能性について指摘されるようになりました。

 

また、医療行為や調査の性質上、金属パッチテスト統計データを発表する機関によって結果には差が生じます。例えばチタンでは皮膚科では陽性者が少なく歯科では多くなる、などがあります。

 

しかし、それぞれに共通することは

ニッケルが多く、銀が少ないというデータです。

 

銀は非常に優れた金属といえますが、絶対に発症しないわけではありません。

どんな金属でも使用者の肌との相性を確認することが大切です。

 

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